Skebで差分のあるイラストを納品する/されることがあります。かつてはPSDファイルにまとめるしかありませんでしたが、機能追加で選択肢と一緒に注意点も増えました。
この記事は差分とPSDについての読み物です。
目次
差分について
Skebユーザーに概要説明は不要だと思うので省きます。
Skebでよく見るパターンについて簡潔に。
一枚絵の差分
表情差分、液体差分、セリフ差分など。一枚絵を部分的に変化させるタイプ。
たまに「イラスト2枚お願いします。」のような一枚絵を複数枚のリクエストもあります。
漫画の差分
セリフ付き一枚絵ではなく、コマ割りされた漫画作品で複数ページというもの。
一般にこれを差分とは言わないでしょうが、後述の複数ファイル納品対応前はPSD1ファイルに収めていました。
宛名差分
Skebではこれが一番多いかも?
リクエスト時に「宛名の有無」を選択できます。イラスト依頼の場合、宛名はイラスト内に書きます。この宛名の表示を切り替える差分です。
また、宛名なしでもクリエイターさんのサインの表示差分があることも。(これは一枚絵の差分とも言えますが。)
PSDについて
絵を描くクリエイターさんには馴染み深い形式なのでしょうか?クライアントとしては「レイヤーに対応した画像ファイル形式で、対応ソフトが少ない」程度の認識で十分かと。
詳しくは外部の情報を参照。
Skebのイラスト納品ではPSDが推奨されています。
イラストを納品する場合
- PSD(推奨)・PNG・JPEG・GIF・アニメーションGIFが対応しています。クライアントはオリジナルデータの他、原寸のPNGをダウンロードできます。
複数ファイル納品の対応前は、差分はPSDでレイヤーをわけるしか方法がありませんでした。
なお、差分ありのPSDで納品された場合、原寸のPNGはプレビュー(作品ページに表示される状態)のダウンロードとなり、差分選択はできません。
PSDファイルを開くには
一般的な画像ビューアでは開けないと思います。上記のPixiv百科事典の「psd形式に対応しているペイントソフト」に代表的なものが挙げられています。
私はPCでGIMPを使って開き、PNGでエクスポートしています。差分があれば差分ごとにエクスポート。それから普段遣いのビューアで見ます。
PSDファイルによってはGIMPで開けないケースもあるそうですが、今のところ遭遇していません。
問題となるのは、PCを持っておらずスマホしかないクライアント。現在ではそう珍しくもないようです。
スマホの定番アプリが見つかりません。
PSDを見るだけのビューアアプリならすぐ出てくるのですが、無料でレイヤー表示を切り替えてエクスポートできるアプリというのが中々見つかりません。(GIMPがあるので本腰入れて探してないというのもありますが。)
あとは差分・レイヤーがあることに気づかないクライアントさんもいます。検索すれば情報は出てきますが、「知らないことを知らない」状態だとそれも難しく……。
これを心配するクリエイターさんも多いです。レイヤーの一番上に「差分あり」と注意書きして作品ページで見えるようにしてるのもありますが、これだとPNGダウンロードでも注意書き入りになってしまうデメリットがあります。
納品時にツイートするのが現実的でしょうか。
2022/07/16追加:
スマホ無料アプリで開く
コメントで情報をいただきました。
スマホでのPSDデータですと、ibis paintで読み込めます。しかし、最大サイズが4096pxのため、クリエイター側がそれ以上だとそのままの画質で読み込めないですね。アプリ版メディバンペイントは未検証ですがサイズが上限がもう少し高いので読み込みやすいかも?
どちらも無料ペイントソフトでアプリサイズもさほどないのでスマホユーザーは苦しまないと思います
というわけで検証しつつご紹介。
アイビスペイント / ibisPaint
インストールして直感で操作したら全然開けませんでした。ちゃんと調べましょう。
公式サイトにバージョン9.4.0の新機能として「PSDファイルのインポートのやり方」が書いてあります。
が、新機能の紹介ページということは、次の更新等で消えたり移動するかもしれません。
iCloud、Dropbox、Googleドライブなどに保存したPSDファイルを選択して、①[共有]をタップします。
PSDファイルの共有先に②[アイビスペイント]を選択します。
出典:新機能の紹介 - ibisPaint 引用日付:2022/07/16
幸い、動画があったのでこちらをどうぞ。
アイビスから開くのではなく、ファイルの共有を行うのが特徴です。
直感的じゃないですね。
一応、スクショも貼っておきます。
アプリはAndroid版で無料の『ibisPaint X』、ファイルの共有は『ES ファイルエクスプローラ』から行っています。
・PSDファイルを共有。共有先のアプリ一覧からアイビスペイントを選択。
・アイビスペイントのマイギャラリーに、共有したファイルが追加されているので開く。
・画面下側のレイヤーアイコンを選ぶとレイヤー一覧が表示される。各レイヤーの目玉アイコンで表示切り替え。
・完了!
メディバンペイント / MediBang Paint
続いてメディバン。基本無料でプレミアム課金があるタイプのアプリですね。
こちらはアプリから「PSDインポート」で開けます。
・マイギャラリーの「+ボタン」→PSDをインポート。
・一覧に追加されるので開く。
・レイヤー切り替えはアイビスペイントと同様。
注意事項
コメントの最大サイズのところ。画像サイズ(幅・高さ)に上限があります。
各アプリで新規キャンバスを作るときに確認できます。
アイビスペイントは4,096 x 4,096 px。
メディバンペイントは20,000 x 20,000 px。
メディバンはともかく、アイビスは制限を超えたサイズを納品するクリエイターさんがいそうですね。
本来、高画質はありがたいことですが…。
あとファイルサイズが大きい場合やレイヤー数が多い場合も開けないことがあるようです。
下記の立ち絵素材、58MBでレイヤーたくさん(3桁?)のPSDを開こうとしましたが、スマホが爆熱になってアプリが応答しなくなりました。
アプリの制限と言うよりスマホのスペックの問題っぽいですね。
https://seiga.nicovideo.jp/seiga/im10775057
Skebでこの量と質の納品は珍しいと思いますが、予備知識ということで。
スマホでの開き方はここまで。
納品時の注意
クリエイターさん向け。
納品時に謎エラーが出ることもあるそうです。これについては下記参照。
Skebのアップロードがうまくいかない時は
・不明瞭化処理のレイヤーが外せるようになってないか。外せない場合でもエラーが出る場合はレイヤーを統合してみる。
・容量が500MB以上や数万ピクセルになっていないか確認する。容量やピクセル数を縮小してアップロードする。
を試すと99%成功すると思う。— なるがみ (@nalgami) July 6, 2020
容量の上限はクリエイターガイドラインなどで最新情報の確認を。後ほど引用あります。
複数ファイル納品について
サービス開始時は1ファイルしか納品できませんでした。
今はサービスでつけてくれてる人がいるけど、差分や複数枚が当たり前になると作家さんの負担や気軽さ、金額が合わなくなってくると思うので複数枚対応は今のところしません。どうしても差分入れたい場合はPSDでレイヤー分けるのはOK。ただしモザイクを外せるようにしたり、外部のURLを埋め込むのは禁止
— なるがみ (@nalgami) April 1, 2020
>差分や複数枚が当たり前になると作家さんの負担や気軽さ、金額が合わなくなってくると思う
かつては「やらないことリスト」入りまでしていましたが、2021/04に複数ファイルの納品に対応しました。
そして、リリース当時よりご要望の最も多かった複数ファイルの納品に本日より対応いたしました🎉
すべてのジャンルについて、1リクエストあたり10ファイルまで納品することが可能です。
漫画や差分、目覚まし音声など、是非複数ファイル納品機能をご活用ください。
特に漫画で要望が多かった気がします。
2021/11現在、24ファイルまで、イラストは1ファイルあたり1GBまで納品可です。
納品可能なファイルの仕様
納品できる点数は1リクエストにつき24ファイルまでです。イラスト、ボイス、ムービー、ミュージックの場合は1ファイルあたり1GBまで、テキストの場合は1ファイルあたり10MBまでアップロード可能です。
この対応により、「PSDを開けないクライアントのために差分をPNG/JPGでわけて納品」という選択肢が取れるようになりました。もちろんPSD+PNG複数というのも可能です。
印刷してお届けについて
差分とPSDで一番困るところです。
「リリース後にやること」に入っていた印刷してお届け機能。紆余曲折あったようですが、2021/10に追加されました。
印刷してお届け機能提供開始
長らくお待たせいたしました!
サービス公開の2018年より利用規約にて予告させていただいておりました「印刷してお届け」機能を本日2021年10月1日より提供開始させていただきます。出典:印刷してお届け機能開始と総登録者数150万人突破、リクエスト手数料無料キャンペーンのお知らせ - skeb_jp - Medium
私はこれにはあまり興味が無いので「待望していた人は良かったね」というのが正直なところです。
ただし、PSDのレイヤーはいじれず、プレビューの状態でしか印刷できません。原寸のPNGダウンロードと同じです。
レイヤーをいじったり高度なことはできないのでプレビューのまま出てきます
— なるがみ (@nalgami) September 30, 2021
リクエストへの影響
過去のリクエストも印刷することができますが、ユーザーはこの仕様を想定できなかった、そもそも複数納品できない期間が長かったため困ったことがおきます。
ちょうどいい例があったので紹介します。
最初のリクエストはおそらく複数ファイル納品対応より以前で、PSD1ファイルに複数枚のイラスト差分が収められています。その後、印刷用に複数ファイル納品を希望した別リクエストをしています。
印刷用に複数納品で再依頼された例。PSDで納品されたのは画質のため?
ねこまたなおみ/1日目東ユ4...さんのコミッション「Skebの印刷してお届け機能を使用したい https://t.co/ktBnBLzYaR #Skeb #Commission @skeb_jpより
— ぬますけ (@numasuke555) November 21, 2021
Skebの印刷してお届け機能を使用したいため、以前依頼した及川雫ちゃんのイラストをイラストごとにファイル分けして納品いただけないでしょうか。
ランジェリー姿・農作業・及川牧場の3ファイルで、宛名表示なしでお願いします。
文字差分2パターンの計6枚をPSD6ファイルで納品されています。PNG/JPGにしないのは圧縮による画質劣化を避けてのことでしょうか。
他の方のリクエストなので詳細はわかりませんが、2回のリクエストから更に印刷で掛かる金額を想像すると……。
今後のリクエストで印刷する、あるいは印刷するかもしれないクライアントは、予め依頼文に含めておくのがよさそうですね。
印刷を考慮した例もひとつ。
予め印刷を考慮したリクエストの例。宛名の有無で複数納品を希望している。
もたげさんのコミッション https://t.co/dsFHaWnOku #Skeb #Commission @skeb_jpより
— ぬますけ (@numasuke555) November 21, 2021
・差分について PSDファイルもしくはPNG等で宛名有無差分を「複数ファイル」でいただきたいです。
※「印刷してお届けを行う」を行う可能性があるため
ちなみに宛名と一緒にメッセージやサインも非表示になっていました。こだわりがある場合はそこの指定も必要になりますね。
まとめ
お手軽が売りのSkebもできることが増えて、やること・考えることも増えてきた感があります。
差分や複数納品は漫画作品等でとても有用ですが、クリエイターの制作や納品作業の手間が増え、クライアントはリクエスト金額を決めるのが難くなります。
また印刷とPSDは、クライアントとクリエイターの双方が仕様を理解・意識していないと1回のリクエストを無駄にすることもありえます。
簡潔お手軽なリクエストを心がけつつ、押さえるところはしっかり押さえたいな、と思う次第でした。
差分とPSDの記事はここまでとなります。
おまけ
TwitterでクリエイターさんがPSDについてアンケートしているのを見かけました。
Skebで依頼をしたことがある方にお伺いしたいのですが、納品されたイラストがPSDデータだった場合...#Skeb
— LiO@お仕事+skeb募集中 (@lio8644) November 17, 2021
「結果だけ見たい人」を除いた85くらいの票数で、「PSDを開ける人」と「他形式画像でDL or PSD自体知らない人」がほぼイコールです。
自分が想像していたよりもPSD知らない人が多いんだなー、と思ったのが今回の記事作成のきっかけです。
ちなみにLiO氏はこういう絵やSD絵を描く方です。(↓は記事作成時のアイコン絵)
うしし pic.twitter.com/sJOjVhmU7Z
— LiO@お仕事+skeb募集中 (@lio8644) February 11, 2021
Skebページはこちら:https://skeb.jp/@lio8644